国連「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の地域拠点『中部ESD拠点』

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第5分科会(伝統文化(伝統知)とESD)

二十四節季カレンダー

第5分科会(伝統文化(伝統知)とESD)活動の目的

 第5分科会は、広く「伝統知」「地域知」「伝統技術」「風土」などの要素を用いて、持続可能な社会づくりのための学びの手法を模索する分科会です。特に、伊勢・三河湾流域圏における地域の伝統知を見直し、二十四節気のような暦を用いた「自然との共生」の学びの手法を構築します。また、セクター別分科会(「企業とNPO」「学校教育」「大学教育」)を横串に指し、各主体別の活動範囲において伝統知を用いたESDプログラムを構築します。

今年度の活動内容

 本分科会では、本年度4回のワークショップを行いました。第1回ワークショップでは、衣食住に焦点を当て、身土不二の農業、天然染色、伝統的な街並みをテーマに伝統知と持続可能な社会づくりを論じました。第2回は、和食をテーマに、地域の伝統野菜や調味料について、また、和食と日本食の違いなどに関する議論を通して、伝統知とは何かを論じました。12月23日には「伝統文化とESD」分科会におけるモデル構築検討会を開催しました。検討会では、これまでのワークショップで検討した、衣食住に関わるさまざまな伝統知の事例を、二十四節気という古来の暦を軸に再検討し、持続可能な社会づくりのためのプログラムづくりを始める案が出ました。これを受けて、第3回のワークショップでは、「二十四節気ときもの」の著者をお招きし、当分科会におけるモデルづくりの軸となる二十四節気に対する理解を深めました。第4回は、「暦としきたりに込めた先人の知恵」と題し、二十四節気と地域に特有な伝統的な行事やの関連性について議論を行いました。

これまでの成果は、
 ①地域における多様な伝統知の事例を取り上げ、ESDと関連付けることができました。
 ②二十四節気等の暦を軸としたESD教材(プログラム)の作成へと方針が固まりつつあります。

 二十四節気を用いる最大の利点は、いかに伝統知が季節・暦と密接に関わっているかを知り、生活の場の中で、人と自然の関係を再確認できることにあります。特に、自然の恵みがどこから来て、どのように消費してどこへ行くのか、衣食住における循環の仕組みを学ぶことができます。
さらに、暦を用いたESDは、日本のみならず世界各地において応用が可能であり、将来的には、持続可能な社会づくりに向けた国際対話に発展するものと考えています。これは、日本や中国などの自然環境の中で育まれた二十四節季のような暦が、世界各地でその土地に合った独自の暦があり、自然環境と人との多様な共生の現実があるのではないかという仮説に基づくものであります。

今年度の活動成果

ワークショップ「伝統文化とESD」

 持続可能な社会づくりのための人材育成を目的に、国連は「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」を進めています。「人と自然」や「人と人」の共生社会とはどのようなものか。伝統的な知恵から学ぶことを目的に、中部ESD拠点「2014年プロジェクト」の一環として、「伝統文化とESD」をテーマにワークショップを開催しました。本ワークショップは、「2014年プロジェクト」の3つのセクター別分科会(①企業とNPO、②学校教育、③高等教育)に対して、横断的なテーマで取り組む分科会として立ち上がった「伝統文化とESD」分科会が企画・実施したものであります。開催概要および成果は以下の通りです。

第1回ワークショップ「衣食住から「共生」を考える」開催報告

第2回ワークショップ「食とESD―温故知新:未来につなぐ伝統文化―」開催報告

第3回ワークショップ「暦とESD~二十四節気ときもの~」開催報告

第4回ワークショップ「二十四節気~暦としきたりに込めた先人の知恵~」開催報告

ユネスコ世界会議に向けて

 横断的テーマ別分科会として、セクター別分科会(「企業とNPO」「学校教育」「大学教育」)に跨って活動を進めるという当初の目的が達成できていない点が課題ですが、しかし、分科会立ち上げから現在までに、祭り・天然染色・農業・伝統的な街並み(景観)・和食・きものなど、各分野から講師を招くなどして、伊勢・三河湾流域圏における伝統知の収集を行うことができました。こうした伝統知を用いたESDの発展の可能性を模索する作業は、今後、3つの分科会を横断的につなぐための基礎的かつ必要不可欠なステップでありました。
 現時点では、さまざまな分野における伝統知を、(他の案も取り入れる方向ではあるが)二十四節気というキーワードでつなぎ、自然の営みに合った暮らしを見直すことで、持続可能な発展のための学びとする方向性が合意されました。今後は、他の分科会においても、伝統知の重要性に意識を高めてもらいつつ、連携の可能性を探りたいと考えています。特に、学校教育現場における季節を軸とした教育プログラムや教材を調査するなどの取組みが必要であると考えます。二十四節気をPRするために、メディアとの連携も課題です。

 中部モデルの構築については、ESD推進の「中部モデル」の一要素となる「伝統文化とESD」分科会からの提案は、伊勢・三河湾流域圏における、衣食住に関わる伝統的な知恵の発掘と、それらすべてを繋ぐ軸として「二十四節気」をキーワードに、ESDプログラムを構築することです。具体的には、衣食住の衣に関して、きものや天然染色と季節的要素を明らかにして、二十四節気において、どの時期にどのような染物が出来るのか、あるいは、どのようなきものを着ることが相応しいのかといった事柄をカレンダーにまとめます。また、衣食住の食も同様に、二十四節気で暦に合った伊勢・三河湾流域圏における食物を知り、住に関しても、林業における季節行事や地域の祭りを含めて、暮らしに関わる二十四節気のカレンダーを作成します。これらを、ユネスコスクールなどの学校に配布し、ESDの教材として活用していただきます。また、「ローカル・カレンダーESD」として世界各地の自然との共生を学ぶモデルとします。