国連「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の地域拠点『中部ESD拠点』

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第3分科会(高等教育)活動

第3分科会(高等教育)活動の目的

 第3分科会(高等教育)では、持続可能な中部地域の創生に資する人材教育のための教育について、大学・大学院教育に用いることのできる教材・マニュアル等からなる「持続可能な中部・人材育成プログラム」を開発と普及を行っています。
このプログラムは、この地域の大学生・大学院生の持続可能な中部のための政策形成能力を涵養し、「持続可能な社会」とはどのような社会なのかを考え、どう行動するかを考え、どう行動につなげるかを考えるためのツールの構築することを目的としています。このプログラムを通じ、学生の、地域の問題解決の方策の企画・立案を通じたクリティカルシンキング能力・問題解決スキルの向上を目指しています。これまでに、このプログラムの普及に先駆け、複数の大学においてこの試行を行いました。大学生自身が自主的に持続可能な地域について考え、その成果を発表し討議することにつながり、とても刺激的であったという評価が得られています。

今年度の活動内容

 今年度は「持続可能な中部・人材育成プログラム(案)」の試行を、複数の大学で実施しました。具体的には、名古屋大学・名古屋市立大学・富山県立大学において試行を行いました。名古屋大学においては大学院環境学研究科の体系理解科目「環境政策論」(大学院修士1年向け)、名古屋市立大学においては教養教育科目「人間と自然12(ESDと環境)」(大学1年向け)において、富山県立大学においては工学部「環境マネジメント」(大学3年向け)において、プログラムの一つである「持続可能な中部:将来の姿」と題した、環境・経済・社会の相互関係性を把握するためのマトリックスを用い、グループワークを行いました。このマトリックスは、横列に環境・経済・社会の各分野に関する目指すべき目標3種類ずつ合計9項目(環境:低炭素社会・循環型社会・自然共生社会、経済:地域経済再生・所得格差是正・雇用創出)を取り、縦列に各目標を達成するための分野と手段について3分野それぞれ6項目(行財政・国土構造:税金・社会保障財源・行政体制・公共サービス・国土構造・地域交通、経済・企業:原材料・労働・製品市場・貿易自由化・経済運営・付加価値の源泉・成長産業・企業経営、資源・エネルギー・くらし:食糧・暖房・給湯・発電・廃棄物処理・耐久消費財・環境負荷削減方法)を取っています。また、それぞれの項目について3つの個別的選択肢を設けています。また、導入教育にも使用しやすいよう、本マトリックスの簡略版を作成し、簡略版は、横列はオリジナル版と同様にに環境・経済・社会の各分野に関する目指すべき目標3種類ずつ合計9項目を取り、縦列に各目標を達成するための分野と手段について3分野それぞれ2項目(行財政・国土構造:税金・行政体制、経済・企業:貿易自由化・付加価値の源泉、資源・エネルギー・くらし:発電・廃棄物処理)を取っています。
名古屋大学においては、大学院教育であることもあり、簡略版ではないオリジナルバージョンを用いましたが、名古屋市立大学、富山県立大学では簡略版を使用しました。また、名古屋大学と富山県立大学では講義の1コマ分(90分)でプログラムの一部の試行を行いましたが、名古屋市立大学では、基礎知識の説明や習得も含め、15コマ分の時間をこのプログラムの試行に費やしました。
本プログラムでは、個人またはグループごとに「持続可能な中部:将来の姿」マトリックスに点数を付けさせました。点数の付け方は、当該目標を達成する場合、当該政策手段が良い方向に作用すると考えられる場合は+1、どちらとも判断ができない、分からない場合は0、悪い方向に作用すると考えられる場合は-1を付けるという方法としました。これらの点数の合計を、目指すべき目標ごと、政策手段ごとに出し、この結果をレーダーチャートに示しました。次に、これらの結果についてプレゼンテーションをさせ、グループごとの違いと今後取り組むべき課題についてディスカッションを行いました。この経験に基づき、大学教員を中心とする分科会構成員は教材の改善点、講義の進め方、学生への提供資料等について検討し、プログラム案のブラッシュアップを行いました。なお、本プログラムのオリジナル版は表1に、簡略版は表2に示す通りであります。

        

表1「持続可能な中部:将来の姿」マトリックス   表2「持続可能な中部:将来の姿」マトリックス(簡略版)

今年度の活動成果

 ここでは、名古屋市立大学と富山県立大学における試行結果について記載します。試行結果として、「持続可能な中部・人材育成プログラム」の実施段階における学生への説明・提供資料、グループワークの成果であるレーダーチャート、学生アンケートの結果等について述べます。

1 名古屋市立大学における試行結果

2 富山県立大学における試行結果

3 課題

ユネスコ世界会議に向けて

 2013年度に「持続可能な中部・人材育成プログラム(案)」の試行を行った3大学(名古屋大学・名古屋市立大学・富山県立大学)においては継続してこの実践を行うとともに、この他の大学における試行を目指します。また、この経験の蓄積をさらに進め、講義の進め方に関するマニュアルの作成を目指します。これらすべてを「持続可能な中部・人材育成プログラム」(完成版)としてとりまとめます。「持続可能な中部・人材育成プログラム」を構成するものとして、①「持続可能な中部:将来の姿」マトリックス、②環境・経済・社会に関するあらゆる視点からのデータ等の教材、③本プログラムの実施のための教員用マニュアルが挙げられます。これら3点が揃い、初めて「持続可能な中部・人材育成プログラム」が完成します。特に①については、この地域の先進的事例と伝統的・歴史的知識や智慧・伝統文化との関係を踏まえるものとし、中部ESDモデルを構築します。さらには、本プログラムの普及のための仕組みも具体的に検討します。