
第5分科会は、広く「伝統知」「地域知」「伝統技術」「風土」などの要素を用いて、持続可能な社会づくりのための学びの手法を模索する分科会です。特に、伊勢・三河湾流域圏における地域の伝統知を見直し、二十四節気のような暦を用いた「自然との共生」の学びの手法を構築します。また、セクター別分科会(「企業とNPO」「学校教育」「大学教育」)を横串に指し、各主体別の活動範囲において伝統知を用いたESDプログラムを構築します。
これまでの成果は、
①地域における多様な伝統知の事例を取り上げ、ESDと関連付けることができました。
②二十四節気等の暦を軸としたESD教材(プログラム)の作成へと方針が固まりつつあります。
二十四節気を用いる最大の利点は、いかに伝統知が季節・暦と密接に関わっているかを知り、生活の場の中で、人と自然の関係を再確認できることにあります。特に、自然の恵みがどこから来て、どのように消費してどこへ行くのか、衣食住における循環の仕組みを学ぶことができます。
さらに、暦を用いたESDは、日本のみならず世界各地において応用が可能であり、将来的には、持続可能な社会づくりに向けた国際対話に発展するものと考えています。これは、日本や中国などの自然環境の中で育まれた二十四節季のような暦が、世界各地でその土地に合った独自の暦があり、自然環境と人との多様な共生の現実があるのではないかという仮説に基づくものであります。
横断的テーマ別分科会として、セクター別分科会(「企業とNPO」「学校教育」「大学教育」)に跨って活動を進めるという当初の目的が達成できていない点が課題ですが、しかし、分科会立ち上げから現在までに、祭り・天然染色・農業・伝統的な街並み(景観)・和食・きものなど、各分野から講師を招くなどして、伊勢・三河湾流域圏における伝統知の収集を行うことができました。こうした伝統知を用いたESDの発展の可能性を模索する作業は、今後、3つの分科会を横断的につなぐための基礎的かつ必要不可欠なステップでありました。
現時点では、さまざまな分野における伝統知を、(他の案も取り入れる方向ではあるが)二十四節気というキーワードでつなぎ、自然の営みに合った暮らしを見直すことで、持続可能な発展のための学びとする方向性が合意されました。今後は、他の分科会においても、伝統知の重要性に意識を高めてもらいつつ、連携の可能性を探りたいと考えています。特に、学校教育現場における季節を軸とした教育プログラムや教材を調査するなどの取組みが必要であると考えます。二十四節気をPRするために、メディアとの連携も課題です。
中部モデルの構築については、ESD推進の「中部モデル」の一要素となる「伝統文化とESD」分科会からの提案は、伊勢・三河湾流域圏における、衣食住に関わる伝統的な知恵の発掘と、それらすべてを繋ぐ軸として「二十四節気」をキーワードに、ESDプログラムを構築することです。具体的には、衣食住の衣に関して、きものや天然染色と季節的要素を明らかにして、二十四節気において、どの時期にどのような染物が出来るのか、あるいは、どのようなきものを着ることが相応しいのかといった事柄をカレンダーにまとめます。また、衣食住の食も同様に、二十四節気で暦に合った伊勢・三河湾流域圏における食物を知り、住に関しても、林業における季節行事や地域の祭りを含めて、暮らしに関わる二十四節気のカレンダーを作成します。これらを、ユネスコスクールなどの学校に配布し、ESDの教材として活用していただきます。また、「ローカル・カレンダーESD」として世界各地の自然との共生を学ぶモデルとします。